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【企業側|労務問題】未払い残業代請求への対抗策|固定残業代制を有効にするための必須チェックリスト
<弁護士が解説>

2026年02月12日

「元従業員から内容証明郵便で数百万円の残業代を請求された」 「固定残業代(みなし残業代)を支払っているから大丈夫だと思っていたのに、労働基準監督署から是正勧告を受けた」

近年、未払い残業代請求は企業にとって無視できない大きな経営リスクとなっています。特に、多くの企業が導入している「固定残業代制」は、裁判所で「無効」と判断されるケースが後を絶ちません。もし固定残業代が無効とされれば、これまで支払っていた手当は単なる「基本給の一部」とみなされ、その全額に加えてさらに残業代を二重に支払う最悪の事態を招きます。

本記事では、会社側労務を専門とする弁護士の視点から、残業代請求への対抗策と、固定残業代制を有効に機能させるための必須チェックリストを解説します。

❶| なぜ「固定残業代制」が裁判で否定されるのか?

固定残業代制(みなし残業手当)とは、実際の残業時間のいかんにかかわらず、あらかじめ一定時間の残業代を固定して支払う制度です。事務作業の簡略化や人件費の予測可能性を高めるメリットがありますが、法的には非常に厳格な要件が課されています。

裁判所で「この固定残業代は無効である」と判断される主な理由は、「通常の労働時間の賃金」と「残業代」が明確に区別されていないことにあります。

❷| 【弁護士監修】固定残業代制の有効性チェックリスト

あなたの会社の制度は法的に守られているでしょうか?以下の5つのポイントを確認してください。

□チェック①| <判別可能性>基本給と手当が明確に区分されているか

就業規則や雇用契約書において、「基本給 〇〇円(固定残業代含む)」といった曖昧な記載ではなく、「基本給 〇〇円、固定残業手当(残業45時間分として)〇〇円」のように、残業代部分の金額が明確に切り分けられている必要があります。

□チェック②| <対価性>その手当が「残業の対価」として支給されているか

名称が「営業手当」や「業務手当」であっても、それが残業代の代わりであることを就業規則や雇用契約書等で明文化していなければなりません。「残業代が含まれていると思っていた」という主観的な認識だけでは通用しません。なお、固定残業代として支払う手当の名称は、残業代であることが一目で分かる名称がお勧めです。

□チェック③| <金額の明示>固定残業代の金額が明記されているか

「時間外手当として〇〇円を支払う」というように、支給金額を明記しておく必要があります。何時間分の時間外手当に相当するかは、判例上固定残業代の有効要件とはされていませんが、記載しておくことが望ましいです。なお、過労死ラインを超えるような不当に長い時間(例:月80時間以上)を設定している場合、公序良俗違反として制度自体が無効になるリスクがあります。

□チェック④| <差額精算の実施>超過分を別途支払っているか

固定残業代制は「定額を払えばそれ以上払わなくてよい」制度ではありません。設定した金額を1円でも超えたら、その差額を支払う義務があります。この精算ルールが実際に運用されていることが、制度の有効性を支える重要な証拠となります。また、就業規則や雇用契約書にこのルールを記載することが望ましいです。

□チェック⑤| 最低賃金を下回っていないか

固定残業代や通勤手当等を除いた「基本給」その他の通常の賃金を労働時間で除した際の時給が、地域の最低賃金を下回っているケースが散見されます。これは即座に違法となるため、毎年の最低賃金改定に合わせたチェックが必要です。

❸| 残業代請求を受けた際の「初動対応」と防衛策


もし従業員や弁護士から請求が届いたら、以下のステップで対応を検討します。

●労働時間の再計算と「消滅時効」の確認

現在、残業代請求の消滅時効は「3年」です(将来的に5年に延びる可能性があります)。まずは相手方の主張する労働時間が客観的記録(タイムカード、PCログなど)と一致するか精査します。

●「休憩時間」や「手待時間」の精査

請求額を減額できるポイントとして「休憩時間が適切に取れていたか」があります。単に席に座っていただけの時間は労働時間(手待時間)とみなされることが多いですが、完全に業務から解放されていた実態があれば、労働時間から除外できます。

●管理監督者性の検討

課長や部長といった役職者からの請求の場合、その従業員が法的な「管理監督者」に該当するかを検討します。ただし、裁判所での判断基準は非常に厳しく、単に役職名があるだけでは認められません。

❹|トラブルを未然に防ぐために

一度トラブルが発生すると、会社は金銭的損失だけでなく、従業員の士気低下や採用への悪影響など、多大なダメージを負います。

• 就業規則の適正な改定
• 雇用契約書の個別見直し
• 客観的な打刻システムの導入

これらを平時に行っておくことが、最強の防御となります。

■ まとめ|労務の不安は専門家へ

「うちは昔からこのやり方だから」「周りの会社もやっているから」という理屈は、労働審判や裁判の場では通用しません。固定残業代制は、正しく運用すれば企業と従業員の双方にメリットのある制度ですが、一歩間違えれば経営を揺るがす爆弾になりかねません。

少しでも自社の制度に不安を感じられたら、手遅れになる前に、企業側労務に精通したKAI法律事務所にお問い合わせください。